皆さんご無沙汰しております。Hylenです。
M3まであと1か月少しですね。今回かなりパワフルな作品を作りましたので、ぜひ手を取っていただけると幸いです。
さて今回は、レッスンやTwitterなどで聞かれることが一番多かった”Colour Bass”の音作りについて。
ちょっと流行りが下火になっている気はしますが、あまりにも聞かれることが多かったので、こちらで一部説明できればと思い、書かせて頂きます。
それではいきましょう!
Colour Bassの音について
Colour Bassってどんな音?って方は、まずはChimeというアーティストを聴くのが良いと思います。
いわゆるワブルベースのサウンドに合わせてテンションコードが鳴っていたり、本来のDubstepと比べてメロディックなものが多いです。今回はこのようなベースサウンドの作り方の一部を紹介します。
Colour Bassサウンドの作り方
1.ベースサウンドを用意する
まずは元となるワブルベースを作成します。こちらはSerumで作っても良いし、サンプルを持ってきてもかまいませんが、一旦バウンスしておいたものにエフェクトをかけた方が、うまくいきます。
(ベースサンプルがないという方はぜひ、Hylen Samplesをどうぞ)
そして土台がとても大事ということ。Colour Bassを作る以前にDubstepやRiddimのノリを理解していないと、そもそも曲として成立しないので、こちらはある程度作りこんだ方が良いです。
今回はこちらのサンプルを基に作っていきます。
2.エフェクトをかけていく
こちらのサウンドを基に、コードをつけてカラフルにしていきます。
2-1.Resonator
まず最初に紹介するのはResonatorです。
あまり馴染みのないエフェクトだとは思います。Resonatorとは”共振”を意味し、エフェクトの種類で言うと、一番近いものはFlangerになるのかな。
今回はAbletonのResonators,Spectral Resonatorを使用しています。ほかのDAWの方は、KiloheartsのResonatorを使うのが一番早いとは思いますが、こちらはMIDI入力やコードでの設定がついてないので、結構な本数刺さないとキツイです。
https://kilohearts.com/products/kilohearts_essentials
今回はこのような設定でこんな感じの音になりました。
Resonatorの特徴として、独特のシャリシャリ感、シンセで出すことが難しい共振での音があります。
多分Ace AuraというアーティストはResonator結構使ってそうなイメージがあります。
Resonatorの弱点として、AbletonのSpectral Resonatorを使わない場合は、コードを動かすことがかなり大変だということ。特定の周波数に対して共振を起こしてピッチを出しているので、そもそもKiloheartsのResonatorを使う場合だったら4和音に対してResonator4つ、そしてオートメーションも4つピッチをかかなければなりません。
もしくはコード毎にResonatorを何個も立ち上げて、ON/OFFのオートメーションを書くか…
コードがゴロゴロ変わるようなものには向きません。なのでMelodic Riddimのような音色一発で押してくジャンルに合うのかと思います。
2-2.Convolution Reverb
2つ目はConvolution Reverbです。
これは所謂とても短いChord Stabを、IR(Inpulse Response)ロードが可能なリバーブで読みこみコードをつける、といった手法です。
IR対応したリバーブであれば使うことができるので、様々なDAWで使用することができます。
AbletonであればHybrid Reverb(Convolution Reverb),FL StudioであればFruity Convolver,LogicであればSpace Designerなど。(Cubaseはちょっと分からないです。Meldaか何かのフリーのを使用してください)
ConvolutionIRを使うとこんな感じになります。今回はWetめで作ってますが、こちらの手法だと、あくまでメインベースのレイヤーとして使うのが一般的です。この音に加えてさらにベースや、アルペジオをレイヤーするとより近くなります。
こちらはChimeがほぼ絶対使っていますね。
もし読み込むChord Stabが分からない場合は、Spliceにある
Chime & Ace Aura – Melodic Riddim Vol. 1 の中にあるConvolution InpulseをDLして読み込ませると良いです。仕組みが分かると思います。
こちらのメリットは、ソースの音でかなり音幅が広がることです。Stabはどんな楽器でも良いし、フレーズもアルペジオが入っていたって問題ありません。
デメリットとしては、使うコードの数だけIRを用意しないといけないことです。
またResonator同様、コードを変える際にそれだけオートメーションを書くか、コードの数だけConvolution Reverbを読まないといけないので、負荷が高いです。
2-3.Vocoder
次はVocoderです。こちらは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
コードトラックをベーストラックへ送って、コードを付与する、といったイメージです。
AbletonではVocoder、FLではVocodexなどを使用します。
Vocoderをベーストラックにインサートした後に、新たにMIDIトラックを作成し、ミュート状態にします。
ベーストラックへ戻りVocoderにてExternalを選択、Audio Fromより先ほどのコードトラックを選択します。
このようなサウンドになります。
VocoderによるColour Bassは主にFL Studioのユーザーには最適です。Vocodexが最強だからです。
主なアーティストとしてSkybreak、Killin’ Void、Sharksなど。
メリットとしてはMIDIをソースにできること。アルペジエーターなども刺せますし、コードを変えるのがとても楽です。またソースのシンセの音でかなり出音も変わります。
またフォルマントやDepthなど、かなり音の幅が広いです。
デメリットとしてはツボを押さえるのが難しいです。またどうやってもピチュンピチュンした音になっちゃうので、それが苦手な人は難しいかもしれません。
Vocodexは別途プラグインで発売されているのですが、こちらはなんとMacでは使用できません。
https://www.pluginboutique.com/product/2-Effects/43-Vocoder/175-Vocodex
どうしても他のDAWで使いたかったら、FL Studioをプラグインとして読み込んだ後、その中で音を作ってバウンス…みたいなやり方しかないです。つまりFLの操作覚えないとしんどいです。コストが高い
2-4. Pitchmap
出ましたPitchmap。
PitchmapとはZynaptiq社が開発しているソフトウェアで、リアルタイムピッチ処理プラグインです。
Virtual Riotが自分の曲のベースにそのまま刺して一気に流行りました。
Pitchmapの設定がうまくいかねぇ!って方がめっちゃいたので説明すると、Colour Bassに至っては簡単で、Purity以外のツマミを0に、Purityを70~90の間に、KEY TRANSFORMをPentatonic系またはPentatonic Blues系にすると、効果がする分かると思います。
特徴として、圧倒的にコードがきれいで濁らないこと。MIDI入力がついているのでコードのトラッキングができること。MIDI入力やIRを用意しなくても、キーを設定したらある程度音が完成されること、でしょうか。
こちらはVirtual RiotのRedlineで確認できます。
Pitchmapのメリットとして、本当にお手軽かつ高品質なサウンドが手に入れられる他、何なら曲の2Mixに刺しても破綻しないことでしょうか。
デメリットとして、プラグインの中ではとんでもなく高いです。(2022/09月 現在5万弱)
https://www.pluginboutique.com/product/2-Effects/35-Pitch-Shifter/2701-PITCHMAP
大体3か月~半年に1回セールで半額とかになるので、そこ狙わないと死にます。
また、設定をある程度詰めても、Pitchmapの音にしかならないです。
全編つかうとかなりしつこいので、僕はグリッチのフィルとか、しつこすぎない程度に使っています。
※原理について
Pitchmapの原理として、PhaseをInvertした音に対してLinear Phaseで特定の周波数を落とせば近い効果は得られることができるみたいです。
こちらの動画では、Ableton、FL StudioのラックにてPitchmapを再現しています。(原理はマジで分からなかったです)。
こちらはKiloheartsとPro-Qがあれば動くので、スケールなどの自由度は低いですがColour Bassに関してはこちらでも充分だとは思います。
(ただし、読み込んだ瞬間PitchShifterが50個くらい起動されて古のブラクラみたいになるのでお気を付けください)
2-5. zplane reTune
こちらは少々マニアックかもしれません。zplaneのreTuneです。
こいつもPitchmapと同じくリアルタイムピッチシフターです。
使い方はシンプルで、出したいコードのスケールを指定するだけ。
こちらもリアルタイムピッチシフターなので綺麗にコードは出るのですが、かなり控えめなので、味付け程度に使うのがおすすめです。
デメリットとしてはセールが少ない、プラグインが機能に対して少し高い、でしょうか。最近発見されたので開拓がすすんでいないプラグインではありますが、Pitchmapの露骨過ぎる音を避けたい際などにはオススメです。
2-6. Cabinet Simurator
こちらはConvolution Reverbに近いものなのですが、本来Inpulse Responseの使い方として、
①リバーブ
②ギターなどのキャビネットシミュレーター
があります。今まではリバーブとしてIRを読み込むことが多かったのですが、ギターのキャビネットシミュレータで読み込めばもっと細かく詰めれるのでは?という発想です。
こちらはAu5が発見してました。
https://www.youtube.com/shorts/1wO62KOqYtE
僕はMeldaのMCabinetを使ってみました。
この手法は本当に最近発見されて、僕も試している最中なのですが、ConvolutionReverbが音の輪郭がぼやけるのに対して、こちらはかなりパリっとさせることができます。Au5、よくおもいつくなぁ…
今回はMeldaのMCabinetを使いましたが、恐らくフリーのキャビシミュでも行けると思います。
3.さらに音をレイヤーする
当たり前ですが、Resonator+Vocoderのように、エフェクトを複数重ねてよりコード感を作ることも可能です。
今回のループでは、CabinetSimuratorとResonatorを使ってみました。
そしてこのようなエフェクトを使う際に気を付けてほしいのが、エフェクトをかけるとサブベースがとても濁るということ。
ただでさえピッチが分かりづらいサブの帯域においてピッチ変動プラグインをかけると、高確率で濁ったり、ピュアで太いサブになることはないので、ローカットを入れてサブは別のトラックで作成した方が良いです。(特にPitchmapは濁ります)
完成したループがこちら
まとめ
いかがだったでしょうか。
Colour Bassは、そもそもDubstepが作れる前提で、さらにコードの知識やサウンドデザインの部分も求められるので、かなり作曲の中でも難易度が高いと思いますが、その分新しいことを発見できるので楽しいジャンルでもあります。
今回使ったプリセットやラック、プロジェクトなどはfanboxにて配布予定ですので、良かったらのぞいてみてください。
(ColourBassのために私はプラグインいくつ買ったんだろう…)