【今更】”OTT”について 基礎①【OTT Fundamentals①】

2022年6月28日

By Hylen

皆さんお疲れ様です。Hylenです。

見事に生活リズムが崩れかけててヤバスです。

さて今回は、DTMerの皆さんは触ったことがあるであろうプラグイン、OTTについて。結構聞かれること多かったので、少しずつまとめていけたらと思います。

それではいきましょう!

OTTとは?

OTTとは、Over The Topの略で、過激なコンプレッションを狙ったものとされています。

一般的には大きく2つのものを指すと思っています。

1つはAbleton Liveに付属するプラグイン”Multiband Dynamics”のプリセットである“OTT”、もう一つはSerumで有名なXferが無償で配布しているプラグインの“OTT”です。

Abletonの方のOTT

XferのOTT

元々Ableton LiveにおけるOTTのプリセットが優秀で、これを他のDAWでも使えるようにとXferが開発したプラグイン、と言われてます。(よく訴えられなかったな…とは思いますが)

あと実はSerum内のCompressorも、Multibandモードにすると、これとほぼ同じものが入ってます。

効果として、

“バキバキになる”

”Supersawに刺しときゃド派手になる”

”ゾウに踏まれたような音”

“とりあえず刺しとけ”

とか言われることが多いですが、音が派手になるとりあえず刺すもの、ってイメージは結構あると思います。

OTTの機能

基本的にAbletonとXferの共通事項として、

・Depth:深さにあたり、コンプでいうRatioになります、かかり具合です。

AbletonだとAmountになるのかな、薄く掛けたいときは1~15くらい、過激にやりたかったら40~60くらいでかけることが僕は多いです。(Leotrixとかは100で3個かけたりしてます)

・Time:コンプでいうリリースになります。

OTTうまく使えない人はここの調整疎かな人が多い気がします。音のキレに直結するのでここシビアに見た方がいいです。後ろにTransient Shaperとかでさらに切る場合は多少疎かでもいいかもしれませんがちゃんと見ましょう。

・In Gain/Out Gain:その名の通りゲインです。音量上げたい人はあげてください。

そしてXferに存在するのが、UpwardとDownwardとなります。

こちらはAbletonとの違いにて説明します。

AbletonのOTTとXferのOTTの違い

Abletonにしかない機能

当たり前ではあるのですが、AbletonでのOTTはMultiband Dynamicsのプリセットなので、Abletonのが触れるところは多いです。(それを崩してしまってOTTと呼べるのかは謎ですが)

バンド数の変更、アクティベーター

Abletonではそれぞれの帯域をバイパスしたり、バンド数を減らして2バンド、1バンドでの使用も可能です。ローエンドはコンプレッションしたくない際などにとても優秀です。

各帯域の指定(スプリット)、ソロモード

これがマジで便利すぎます。

まず各帯域の指定。これは3バンドのうち、どの帯域で分割するかを指定します。Xferは固定です。

AbletonのOTTではLow Frequencyが88.3hzで設定されてますが、これを120hzなどに変更することもできます。(Highも同様)

また、各帯域に対してソロモードがついてます。指定した帯域がどのような音になっているのか確認できます。

例えば、OTTを過激に書けるとハイがピーキーになって耳が痛くなる可能性が高いですが、高域をソロにして確認することで、どこまでキツいか見ることなどもできます。

あまりやることはありませんが、ソロモードがあるので、例えばOTTをかけたHi成分だけをミキサーに送る、といった使い方もできます。

Sidechain

きっと9割9分の人が使っていないとは思いますが、Sidechain信号を送ってかかり具合を調整もできます。

キック鳴ってるときだけOTTのかかり具合を抑える、みたいなこともできます。

気合入れればダッキングもできますがオススメはしないです(なんか良い使い方あったら知りたいので教えてください)

Xfer OTTにしかない機能

Upward/Downward

地味にAbletonにはついてないツマミです。Upwardはスレッショルドより下がった音をどれだけ持ち上げるか、Downwardは逆でどれだけ潰すかです。1つのツマミでここをいじれるのは楽です。特にUpward。

Clean XOV

これは後ほどのOTTの隠し機能で説明します。

OTTどのような状況で使う?

シンセ全般

OTTといったら、BassやSupersawに刺すイメージは結構あるのではないでしょうか。

Bassについてはかなり過激に何個も刺すことがあり、例えばDubstepで有名なZomboyのAbletonの画面では1つのベースに対して6個刺してます。(2:29くらい)

やりすぎ!(でも音は破綻していないのですごい)

ギター

バンド畑の人やギタリストの方は、恐らくOTTはシンセに刺すもの、ってイメージが多いかもしれませんが、ギターにもかなり有効です。特にクリーンのタッピングをするとき。

コンプレッサーとは違う音粒のそろい方をします。(高音部分やハーモニクスなどの音の小さいものをドカンと持ち上げるイメージです)

ichikaさんとかJYOCHOみたいなトラックやりたい方は、結構楽できるプラグインではあるので試してみてもいいのではないでしょうか。(ライブで組み込むのは結構面倒ですが)

ボーカル

ボーカルトラックにも使われることが多々あります。

いわゆるオートチューンが聞いたラップとかは使われること多いです。バキバキパリパリのボーカルってやつです。ただこの状況で使うとしたら3Bandである必要はあまりないかも。

マスター(マスタリング)

最近だとMixを少なめにしてマスターに刺されることも多々あります。

例えば、Snail’s Houseさんのマスターにもこんな感じで刺さってます。27%マスターにかけるって結構きつめにかけている印象ですが、破綻してないしかっこいい。

(Snail Sound Labs.はPatreonもやっているのでぜひチェックしてみてください)

ちなみに僕はあんま刺さないですが、刺すとしたらAmount1桁パーセントで使うことが多いです。

OTTの隠し機能

また小ネタではありますが、XferのOTTに関して、実は隠しパラメータがあります。

割と有名なネタなので知ってる方も多いですが、DAW側のパラメータ一覧を出すと、ツマミにないものが結構1つ出てきます。

1つがもClean XOV。中身的にはオーバーサンプリングで、ノイズが軽減されるみたいです。なんやねんXOVって

確かにノイズが軽くなってCPU負荷も大して重くならないので、こちらはデフォでONにしといたほうがいいのかな?とは思います。

そしてもう1つがBypassスイッチ。実はBypとついているものをBypassにすると2バンドなどに変更できます。帯域指定はできません。

OTTに頼り過ぎない方が良い?

Fox Stevensonが以前Twitchだったかな?でOTTについて話をしたときがありました。(Foxがメチャメチャ英語速いのであまり聞き取れなかったのですが…)

時々、OTT使わない方がいいんじゃね?議論が起きます。刺した時点でOTTは位相を崩す、荒らすので、そこをシビアに見るべき音に関しては使わない方が良いのでは、ってのが大体なイメージ。

https://xferrecords.com/forums/general/ott-phase-rotation-fix

確かにこれ系読んでると、マスターに刺すのは怖いな~って気がしますけどどうなんでしょう…MAutoalignみたいな位相直すので無理やり直してもマスターはどうしようもないしな…

この問題をなんかすごいラック組んでARTFXが直してました。すげーけど僕は位相なんて多少崩してなんぼなジャンルなんで使わないかな…マスターにこれ使うのは良いかもしれません。議論は続く…

OTTのインスパイア系プラグイン

OTTがなんでも派手にするプラグイン界の二郎だとしたら、独自にアレンジされたインスパイア系プラグインも存在します。

ラーメンでしか例えることができない男

Slate Digital MO-TT

Slate DigitalのMO-TTです。Slateのサブスク入ってたら使えます。

全体的に使いやすくなってる感じはするのですが、前触ったときはCPU負荷が結構あったので、BassMusicなどのOTT多段掛けするものの代用として使うのは厳しそうだったイメージでした。Mixとかバスに刺すのは結構いいかもしれません。

W.A.Production VINAI XTT

Bounce Generationで有名なVINAIとW.A.ProductionのコラボによるOTTインスパイア系XTT。5バンドとアナライザーLimiterがついてるのが特徴です。またVINAIが監修したプリセットも結構入ってるみたいです。OTT自体がプリセットなのにさらに監修って謎ですが、音は良かったです。これもガシガシ刺すってよりはバスとか追い込みたいトラックに刺す感じかな~

GUIがカワイイ

Soundspear KTT

https://www.soundspear.com/product/ktt

SoundspearのKTTです。KTTはKill The Topの略らしい。下剋上かな?

OTTと比べて6バンド、そして12AX7というチューブ管を使ったエキサイターがついてます。OTT系なのにアナログ要素を入れてくるのは面白いですね。

まとめ

大変長くなってしまいましたがOTTの解説でした。

僕の中の結論としては、マスタリングとかサブベースなどシビアにならなきゃいけない時以外はAbletonのOTTでいいかな…と思いました。(位相なんて崩してなんぼみたいなジャンルの時が多いので…)

その上でのコンプレッションを細かく見たい、位相にシビアになりたいときは、FabfilterのPro-MBやらWavesのC6などの選択肢もあるので、そっちで詰めた方がいいのかな?とも思います。OTTならではの音も絶対あるんですけど。

それでは

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